夜間安全色はシルバーグレー?
どんな色がより安全性が高いのか、という問題については専門の研究がなされていて、とりあえずいえることは、視認性の高いものがいい、ということになっている。視認とは、眼で見て認識することだから、よく目立つ色がいいことになる。人間の眼は、約4万オングストロームから約7万オングストロームまでの波長の光をよく見分け、視覚では黄色に強くアピールされる特性をもっている。ひらたくいえば、いろいろな色の中で、黄色をいちばんよく見分けることができる、ということ。
ところが、どんな色でも「光」がなければ見ることができない。暗闇のなかではどんな色でも見えないのだから、真っ暗闇ではどんな色のものであろうと、視認できないのは当然のことだ。物体に当たって反射してくる光か、物体を透過してきた光で眼は、「形」や「色」を認識する。
さて、シルバーグレー(ガン・メタリック)が夜間の安全色だという常識は、いったいどこから出たのか知らないが、黒と白は色のうちには数えない。強いていうなら白や黒は無彩色。グレーは黒と白の間だから、これも同様だ。黒は反射率、すなわち光を反射する能力に非常に乏しい。逆のいい方をすれば、光を反射しないから黒に見えるわけだ。白はその反対で、よく光を反射する。だから白く見えるわけ。グレーはその中間だ。
こうしてみると、夜間に視認性のいいボデーカラーは、与える光、例えばヘッドライトの光の質に、よく反射するものほどいい。だから、チタンをみがき上げたものだとか、鏡のように与えられた光の90パーセント以上を反射するものが視認性が高いといえる。要するに与えた光に対する反射率の高さが基準となるわけだ。
従って、シルバーグレーが白よりも夜間視認性がいいわけはないから、シルバーグレーを夜間安全色とするのは科学的な根拠に乏しく、「常識」とするのは大きな誤りであるはずだ。ところが、ドライバーの「心理」と「色」となると、話はいくらか違ってくる。
これについては色彩心理学という学問分野があるほどだから、チョチョイのチョイで書けるほど簡単なものではないが、一端を披露すれば、自己顕示欲の強い者は「黄色」を好む者が多いとか、攻撃的な性格の持ち主は「赤色」を好む例が多いとか、ヤーさんはなぜか「黒」好み、などという報告がある。
そうしてみると、夜間に視認性が高い色が全部「安全」につながるとは考えられない。視認性がいくらよくても、根っから危険な人物が運転しているとすれば、どんな色のクルマであろうとアブナイものはアブナい。夜間に安全な色が何かは、各自の考えで選ぶもので、この色なら安全という常識は存在しないのではないか。メルセデスのカタログには視認性の高さまで示している。交通先進国のメーカーらしい配慮といえるだろう。
夜間安全色はシルバーグレー?関連ページ
- シートベルトは本当に安全ベルト?
- 安全ベルトは万一の場合の被害を少なくする、というのは定説だし、実証ずみのことだ。けれども、安全ベルトの取り付け方法や使用法はそうとばかりいえるものではない。例えば飛行機のベルトのような二点式の場合、付けていても付けていないのとおなじぐらい被害を受けることがある。場合によっては使い方が悪かったため、使用していなかった方がよかったようなことも全くないではない。
- ドアロックすると安全?
- 高速道路へ入ろうとすると、必ずと言っていいくらいに書いてあるのか一安全ベルトを締めましょう」の標語。もうひとつ「ドァロックをしましょう」とある。安全ベルトの方はわかる。衝突時のショックで、死んでしまうかもしれないものがケガですむことがある。これは数々の事例が実証し、疑いのないところ。
- エアバッグは安全か?
- 自動車に関する安全性は二つに大別できる。衝突を避ける能力のアクティブセーフティ(第一次安全性:事故を回避する技術)と、衝突が起きてからのパッシブセーフティ(第二次安全性:事故のダメージを軽減する技術)だ。